toggle
2020-01-27

伊藤真「刑事訴訟法入門」から考える②

前回からの続きです。

税理士の受験科目は、所得税、法人税、消費税などの税法がメインで、
実務上、相続税などで民法を勉強することはありますが、
刑事事件関連の刑法、刑事訴訟法については、ほとんど触れる機会がありませんでした。
この本を読んで、改めて、日本国憲法の考え方と刑事訴訟法の関係、刑事訴訟における手続規定、捜査手法などの大枠を勉強することができました。

そこで、繰り返し指摘されていたのが、何かあれば日本国憲法の考え方に立ち返って、刑事訴訟法を検討する、という基本哲学でした。

「このように、刑事訴訟法では人権をめぐっての議論が盛んに展開されます。
つまり、刑事訴訟法は憲法の延長線上にあるのです。
憲法を人権保障の体系として理解すべきことはすでに学習してきました。
このような点から、刑事訴訟法は応用憲法とよばれることがあります。
刑事訴訟法の議論で解決できないような問題が生じたときは、常に憲法に戻って考えるクセをつけることが大切です。」(はじめに)

これを税法の分野で考えてみると、税法も人権保障の体系として理解されなければなりません。
そもそも、日本の法律すべてが、基本的にこの憲法のスタンスで制定されていかなければダメです。
しかし、不思議なもので昔から、人権など守っていたら税金を集めることは出来ない、とでも思っているのでしょうか。
納税者に法律の内容を知らせることなく、なし崩し的に帳簿等の資料を税務署に持ち帰ってしまう(留置)や、
「コンビニの領収書は経費として認めないと経費から除かれる(否認される)」など、法令違反の税務調査がまかり通っています。
この国税通則法改正の時も、海外では当たり前になりつつある「納税者の権利」を明記しようという議論があったようですが、
財務省が最後まで反発し、実現に至らなかった、と言われています。
つまり、日本国憲法の精神を実現しようとはこれっぽっちも思っていていないのです。
実際に、税務職員に「日本国憲法の遵守が求められているよね?」と話しても
「はぁ……、それはそうです」という返事がくるのが実際のところです。

さて、税金を取る側の人権に対するスタンスを簡単に見ましたが、私たち税理士業界はどうでしょうか。
私たち税理士は、納税者の代理人であり、税法の専門家、法律家として、納税者の権利を守らなければなりません。
税理士業務の根幹に憲法を据えて、どっしりと税法に向き合う必要があると思っています。
仮に、税法自体に憲法違反の疑いがあるなら堂々と主張していく必要があると私は思っています。
しかし、実務の現場では、そもそも憲法の観点を意識しながらすることが少ない現状を反映して、税理士のなかで、その精神が浸透しているとはいえない状況です。
税理士が「税務署の下請機関」としてはなく、「納税者の代理人」として、国民から信頼されるには、やはりここの憲法の理解抜きには語れないのではないかと。

「刑事訴訟法入門」を読んで、今の日本の税体系を含め、常に日本国憲法の立場から問いかけていく、もっともっと鋭く呼びかけていくことが、税理士にとってとても大事なのではないか、と強く感じました。

具体的な旧犯則法が国税通則法に編入された問題点については、論文を書いた後にエントリーしていきたいと思います。

関連記事