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2020-02-03

「公文書等の管理に関する法律」の保管規定

税理士の立場から考えると、今、国会で話題となっている「桜を見る会」の行政文書の保管・廃棄問題については、いろいろと言いたくなります。

①そもそも法律の目的に反してる
②保管場所が問題になる時代ではない
③納税者は最低7年保管

①そもそも法律の目的に反している
今回の騒動の発端は、「桜を見る会」というそもそも税金を使ってまで開催する必要性があるかどうかもわからない会を、現役首相が私物化してるのではないか、という疑惑です。
それを、国会で追及されそうになり、政治家の指示なのか、忖度した官僚の指示なのかはわかりませんが、「まずい、保管期間のカテゴリーをかえて1年未満の書類にしちゃえ。そして、1年を超える保管期間が過ぎてるからシュレッダーかけちゃえ」と法律を盾に、事実を闇に葬り去ってしまったわけです。
この保管期間などだめな大元の法律は「公文書等の管理に関する法律」といいます。
この法律は、全部で34条、施行令は25条という非常に短い法律です。
その目的は第一条にあり、「国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすること」とあるように、説明責任を果たすことを目的の一つとしています。
 
そうなんです。
そもそもの法律の目的が、国の諸活動を国民へ説明責任を果たすことを保障するための法律なんです。
もちろん、すべてがダメとは言いません。
基本的に公文書等の保管期間は5年~30年で定められ、無期限のものもあります。
 
この法律の構成は、法律、施行令で大枠を定め、細かい細分については、各省庁等の規則にて、細かいことを定めることになっています。
そして、その規則で、重要性が低い書類は、最低1年保管するように、と定められています。
 
しかし、今回は、この規定を逆手にとって、1年の保管期間が過ぎたから、破棄しちゃえ、と闇にほお無理さってしまったわけです。説明責任を果たすことが目的であるはずの法律であるはずなのに、です。
 
②保管場所が問題になる時代ではない
そもそも、私たちが払った税金を元に給料を受け取っている公務員の人たちが作成した公文書等は、本来国民共通の財産に該当します。
本来であれば、すべて、無期限に保管すべきものであるはずです。
一昔前であれば、膨大な書類の保管場所に躊躇したことでしょう。
しかし、現代のストレージの容量は膨大になり、書類のデータの保管場所は、ほとんど場所をとらないようにすることができる、と言っていいでしょう。
たしかに、セキュリティその他の側面があるとしても、国民・納税者から監視すべき問題が後に判明したとき、それを検証することが不可能な現状のほうが、大きな問題です。
今回の事例がそれを証明しています。
 
③納税者の書類は、7年保管の義務づけ
その一方で、私たち納税者、いやな言い方をすれば「税金を取られる側」はどうなっているでしょうか。
所得税や法人税などの所得課税では、その税額計算の根拠となる帳簿等の書類を、
法律上7年間、保管しなくてはいけません。
7年間です。会社法上では10年保管しなくてはいけません。
 
これは適正な申告をしたかどうかをチェックする(と言っている)税務調査の際、
当然根拠資料が必要となるわけなので、当然だと理解しています。
もちろん、事業規模によっては膨大になるため、大変ですが。
しかも、これはあくまでも法人・個人の私有財産で、税金により作成しているもでも、購入しているものでもありません。自分の身銭を切って購入し、作成しているものです。

一方で、「税金を使う側」(※)である行政側においては、
重要な書類であっても(後になる可能性がある書類でも)
ものによっては、1年で破棄してしまってOKなわけです。
 
税金を払う側は最低7年、
税金を使う側は、最低1年 

ちょっとおかしいんじゃないですかね。

税金を払う側は、税務署からチェックされるために7年保管しないといけない、
税金を使う側は、納税者がチェックをしようとしても、書類がない場合が許されてしまう、
本当に本末転倒な状況を生み出してしまっています。

これで本当に良いのでしょうか。

私たちの感覚では、使わないかもしれない紙媒体の書類は、一応スキャンして取っておこう、という流れが一般的になってきています。
この法律も、「紙媒体の保管期間」を定め、「すべての公文書はデータにして無期限保管」にするべきだと思います。

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