002 税務調査って何?ーー税務調査は「必要があるとき」しかできない
税理士になってから、何度も税務調査に立ち会いました。
どちらかと言えば、当事務所の顧問先というより、飛び込み案件の方が多かったような気がします。
多くの方の中に「税務署は恐い」「税務調査はお土産をあげないといけない」
そんな誤解が広がっているように思います。
そもそも私たち日本の税金は、申告納税制度を採用しています。
法律に基づいて、自分の税金を自分で計算して、自分で納めるという日本国憲法から導き出される国民主権の具体化の一つです。
戦前の日本は、税金は賦課課税、お上=国が税金の金額を決めて、納税者に払わせる形式を採用していました。
■法律上「必要があるとき」しかできない
このように、そもそも税額を決定するのは、私たち納税者です。
あくまでも「決定権」は私たちにあるのです。
その上で、「必要があるとき」には税務署は、適正に行われているかどうか、確認させてください、というのが税務調査の本来のスタンスであるはずです。
税務署や税務職員がどのように考えているのか、ではなくこれが法律上の趣旨となっています。
では、法律の文章では、どのようになっているのでしょうか。
(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)
第74条の2 国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(略)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(略)を検査し、又は当該物件(略)の提示若しくは提出を求めることができる
前回も少し触れましたが、これは税務署職員が税務調査に訪れて、あれこれ質問したりすることができる根拠の法律です。
税務調査の一つの大切な根拠条文です。
下線部にあるように、法律上、「必要があるとき」に税務調査はできるわけです。
逆に言えば、必要がない場合には税務調査はできません。
税務署側から見ると、必要があるから税務調査を行う「目的」があるわけです。
これは、税務調査を行う前に行わなければいけない「事前通知」の一つの項目でもあります。
しかし、税務署はなかなか目的を開示せず「所得の確認」などと言って誤魔化しますが、本来はそれではダメだと思います。
■税務調査は事業者にとっては機会損失
そもそも税務調査は、税務署がその会社の社長や経理担当者を時間的に拘束し、利益獲得の機会を失わせる市民社会にとっては重大な問題です。しかし、私たちは社会における税金の役割の大きさを理解しているため、税務調査の必要性を認め、法律で定められているから従っていると、私は考えています。
その機会損失の部分を税務署は補償もしてくれるわけでもありません。その分、売上が減少しても、です。
あくまでも両者の協力関係で成り立つのが税務調査です。
したがって、本来は、「税務調査の必要性」「目的」がものすごく重要になります。
なにせ、業務形態によっては、会社の営業を数日間止めるわけですから。(税務調査の日数についてはまたの機会に)
たとえば、国税庁「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」では、
とあります。
一応、税務署内部でも下線部にあるとおり、「社会通念上相当と認められる範囲内」であり、かつ、「納税者の理解と協力を得て行うもの」であることを明示しています。
(ただ、この社会通念上というのは、税務署と納税者の力関係で解釈が異なってくるズルい文言ですが)
■納得する調査の理由(必要性)の開示を求める
したがって、税務調査を拒否する、ということではなく、納得する調査の目的を税務職員に開示させることは重要です。
税務職員によっては、柔軟に対応する方もいらっしゃいます。
税務署が、調査に来るということは、決算書、申告書を見て疑問に思うところが必ずあるはずです。
そこを確認できればいいわけですから、そこに必要な資料を重点的に見てもらえればいいわけです。
そのほうが、二日間、三日間などといって、本来の目的から逸脱した、刑法で言えば別件逮捕みたいなことをする必要もありません。
私たちも暇ではありませんし、税務職員も人員削減され多忙を極めています。
このような時代だからこそ、納税者が納得でき、機会損失を最小限に抑える方法で、合理的に税務調査を進めていただきたいものです。