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2020-04-08

納期限の延期をどうみるか?

とりあえず情報収集がんばってきましたが、期待外れなことばかりなので、
これを機に、税金関連のいろんな問題を整理しつつ、こう対策打たないとだめだよね、というのを税理士という実務家の目線から考えたいと思っています。
みなさんの暇つぶしになれば、と思っています。

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▼納期限の延期をどうみるか
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国税庁は、3月5日に通常3月16日までだった所得税の申告・納期限を4月16日までに延長し、4月6日、「確定申告期限の柔軟な取扱いについて」として、4月17日以降も申告が可能としました。
また、3月13日には、「新型コロナウィルス感染症の影響により納税が困難な方へ」として、1年以内に限り、換価の猶予を認めることとなりました。
換価の猶予は、税金を滞納した場合に、財産が差し押さえられ、換価(公売等)をすることを、分割納付などを条件に、先延ばしする制度です。実務的には、分割支払(納付)のために利用されていることが多いです。
やれることのなかで、国税庁にしては「珍しく」現実的で「比較的」迅速な対応だったと思います。
この決断は、評価したいと思います。

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▼現実的にはそんなことできない
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しかし、現実的には、税金の支払いを先に延ばしたとしても、売上げが激減しているなかで納税資金を準備するのは非常に厳しいですよね。
とくに、消費税は納税額が大きいため、1年間伸びたとしても、結局、2020年分の消費税と合わせて支払っていかないとけないわけです。

今年多くの事業者が売上げが減ることが予測されます。
納税が猶予されるということは、結局、その減った売上げのなかから、昨年2019年の売上分の消費税を払わないと行けないのですから、現実的にはとても厳しい状況になります。

少し具体的な数字で考えてみましょう。
(数字を単純化しますので、「昨年10月1日以前は消費税8%だ!」「中間納付があるじゃないか」とかいうのはなしで)

2019年の売上が5,500万円、仕入(外注)が3,300万円だとします。
そうすると、売上の消費税500万円ー仕入の消費税300万円=200万円が納税する消費税の額になります。
今回のコロナ騒動で、納税のために準備していた資金を他に当てざるを得なくなり、納税を猶予してもらうことにしました。
当面、自粛要請で売上げは見込めません。

仮に、2019年分の消費税、200万円を毎月均等に分割すれば、約17万円ですが、4月、5月に払えるわけはありません。
なので、20年4月~8月までは1万円の納付、残りを9月~3月まで均等分割(約28万円)に支払う、ことにします。(実際は徴収法「換価の猶予」の手続をします)

20年の売上が、コロナの影響を受け、半減の2,250万円、仕入(外注)が1,650万円だとします。
そうすると、来年21年に支払額は、250万ー150万=100万円の消費税の額を納めなければなりません。

つまり、納税の猶予をしたとしても、今年の分と昨年分の消費税を合わせた金額、
すなわち、300万円の消費税を納めなければなりません。
売上げが半減しているのに、そのなかで、1.5倍の消費税の支払いが必要となります。

現実のお金の流れの動きを見ても、無理でしょ、ということです。
(「消費税は事業者が消費者から預かっているんでないの?」という都市伝説はいずれ書こうと思います。)

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▼今必要なのは消費税ゼロ%
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結局、支払いを猶予してもらっても、払えるお金が無いし、それを今年生み出せません。

この納税資金の確保の観点から考えると、臨時的な措置として、消費税はゼロにすべきだと思います。
ゼロは無理でも、最低でも5%にする必要があるのではないか、そうしないと、仮に融資を受けてこの困難を乗り越えても、税金の支払能力がないのです。

以前は、感染拡大防止との関係で、今消費税を減税するべきじゃない、と思いましたが認識を改めました。

事業者のことを考えると、
消費税はただちに最低5%に下げる、
消費者や景気を考えると、
騒動収束後、消費税はゼロにする、
というのが景気回復でも一番効果的です。

財源はどうするの?という話もいずれ書こうと思っていますが、
財源云々以前に、仮に税金の支払いを先延ばししたとしても、納税者が死んじゃったら(事業廃止、倒産)、税金を納める人がいなくなっちゃうじゃん、という話です。

だったら、消費税は無くしてしまって、景気を回復させ、他の税目でその分、税金を納めてもらえばOKじゃないですかね。
消費税の歴史はわずか30年強、それまでは消費税がなくてもやれてきたんですから、立法政策レベルの問題で解決できます。

納税の猶予は、今ある法律の枠内のなかで国税庁が下せる判断の限界だと思います。
立法政策は、国税庁の仕事ではないですが、現実に納税者と向き合っているのは、
国税庁の職員の方々です。
ぜひ、こういう現実を上に届けてほしいですね。

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